前提と笑いと移転

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ホルンが弱いからユーフォも吹いたげてと言われた時のホルンの悔しそうなのとと楽譜が違うから音教えてもらう時の申し訳なさが半端ない。

っていうtweetがあって、これはものすごく実感があって、俺は幸せにずいぶん笑ったのだが、これがどうしておもしろいかというと、以下のような背景があるからなのだ。

  • まず冒頭にホルンとユーフォという言葉がでて来るが、この時点でこの話が吹奏楽団内の話であることがわかる。ユーフォはユーフォニアムという楽器を指していて、ホルンとユーフォニアムが同時に演奏されるのは、吹奏楽以外ではほとんどあり得ない。
  • そして、「ホルンが弱いからユーフォも吹いたげて」というのは、ホルンが旨く吹けていないか、音量が足らないから、ユーフォも同じことを吹けという指示であり、要は元々の作曲者の指示を変更しようとしていることな訳で、これは普通プロはやらないから、この話はアマチュアアの吹奏楽団の話である。
  • 吹奏楽は何種類もの楽器で構成されている。全員集まって行う「合奏」の他は、楽器の種類毎に集まって「パート練習」を行う。部活ではこのパートが基本的な生活の単位になる。
  • ホルンは習得が難しい楽器で、中学や高校の吹奏楽部では、まともに吹けるようにならない人はざらにいる。
  • だから「ホルンが弱いから」という、おそらく合奏時にバンドの指導者から発せられた言葉は、バンドのメンバーからすると、「ああ、またか」であり、ホルンパートとしては、いつものつらい指摘である。
  • 一方、「ユーフォ」=ユーフォニアムという金管楽器は、一般に比較的影が薄いと見られている。活躍することもあるが。担当する人の性格は様々だが、普段物静かだが実は変な人、ということが多いとされる。で、基本的には物腰が柔らかい(例外もあるが)。
  • 吹奏楽部は女子が多いせいもあると思うが、基本的に争いを好まない。特にパート間の優劣を表立って問題にすることはタブー視される。もちろん陰では言うが。
  • 上記tweetはユーフォの人から見たものだと思われる。
  • ホルンの楽譜はト音記号で書かれていて、譜面上の"ド"の音がピアノの"ファ"に相当する。これはホルンの特性による。説明は長くなるので割愛。
  • ユーフォニウアムの楽譜はヘ音記号で書かれ、楽譜上の"ド"の音はピアノの"ド"である。
  • したがって、ユーフォの人は、ホルンの人の楽譜をそのまま読めないので、「音教えてもらう」必要が生じる。

どんな笑い話でもそうなんだが、割と多くの前提を要求するヤツほどおもしろい。この話は、吹奏楽経験のあった日本人以外は笑えないと思う。

笑いというのは、知っているヤツとそうでないヤツを分ける機能があるとなんかで読んだことがある。

で、海外へどんどん出て行くのだって、会社は言うわけなんだが、これまでに身につけた「前提」の一部を修正しなきゃならんのが、結構堪える。習得コストも安くはなかったんだぜ。*1

で、自分は高齢の両親を故郷から引きはがして同居している訳だが。

*1:こんなこと言うのは俺が年取ったせいだと思うが。